70代では**「たった一度の転倒」が寝たきりや骨折の引き金になりやすく、実は自宅内での事故も少なくありません。だからこそ、今日から安全にできる2本柱**――
(1) 5回立ち上がり(SS-5)、(2) その場マーチ(足踏み)――を、回数・時間の目安まで具体化して解説します。まずは**「5回立ち上がり=12秒前後」と「その場マーチ=1分×2–3セット」を毎日のチェックポイントに。効果を高めるコグニサイズ(頭×体の同時刺激)**や、家の環境・栄養の見直しまで、国内の最新ガイド・資料を基に丁寧にまとめました。(日本の環境省)
1. なぜ70代に転倒予防が必要?
- 加齢の影響:下肢筋力・バランス・反応時間が低下し、つまずきやすくなります。
- 家の中が意外と危険:浴室・玄関・階段・ベッド周りでの滑る/つまずく/ぐらつくが典型。段差・暗さ・寒さ・乱雑さへの対策が要点です。消費者庁は**「転倒事故の約半数が住み慣れた自宅」**で起きていると注意喚起しています。(日本の環境省)
- “頭×体”を同時に使う運動が有効:コグニサイズは、運動に簡単な計算や語想起を組み合わせる公式プログラム。自宅の足踏みに乗せやすいのが利点です。(ncgg.go.jp)
2. 転倒リスクを測る!「5回立ち上がり(SS-5)」ガイド
2-1. SS-5とは?
椅子から手を使わず立ち上がって座る動作を5回連続で行い、要した時間を測ります。下肢筋力と移動能力の簡便な指標で、国内でも臨床・研究で広く用いられています。(jsccpt.jp)
2-2. 家での正しい測定手順
- 椅子:肘掛けなし、座面40–45cm目安。安定した床、壁側に置く。
- 姿勢:浅く座り、足は腰幅・足裏全面を床へ。
- 腕:胸の前で組む(手は使わない)。
- 計測:「スタート」で計時→5回目の立位が伸び切った瞬間にストップ。
(方法の標準化は国内学会資料に準拠)(jsccpt.jp)
2-3. 判定の“日本の目安”
- 12秒前後:転倒リスクの追加評価を要する実務的カットオフ。日本理学療法士協会のハンドブックは**「12秒以内で完了できれば脚機能が保たれる」と住民向けに提示。要支援・要介護高齢者では修正版SS-5のカットオフ12.82秒**が報告されています。(日本理学療法士協会)
- 年代参考値(日本):70–74歳=8.28±2.03秒など。まずは個人の経過比較(先週より速いか)で変化を見るのが実践的です。(厚生労働省)
ポイント:反動で“バウンド”せず、足裏で床を押す→まっすぐ伸びるを丁寧に。息を止めない。
2-4. 12秒以上・できなかった場合の改善法
- 頻度:週3–5日
- メニュー:
- 立ち座り10–15回 × 1–3セット(3秒で立つ→3秒で座るのコントロール重視)
- 椅子高を上げる(楽→標準へ段階的)
- 安全:痛み手前で中止/ふらつき日は壁・台に指先タッチ。
- 評価:週1回SS-5を測って自己ベスト更新を狙う。
(要支援・要介護高齢者の指標としての妥当性は国内研究で裏付け)(J-STAGE)
3. 転倒予防の基本!「その場マーチ」徹底ガイド
3-1. ねらい
歩行リズム・バランス・下肢筋持久力の土台づくり。椅子立ち上がりと合わせると、実生活の移動能力を高めやすい組み合わせです。
3-2. やり方(自宅版)
- 姿勢:背すじを“ふわっと”伸ばし顎は軽く。
- 動き:膝をやや高く交互に引き上げ、リズミカルに足をつく。
- 腕:軽く振る。バランス不安なら台や壁に触れてOK。
- 呼吸:吐く→吸うの自然なリズム。
3-3. 回数・時間の目安
- 1分×2–3セット/日から。余裕が出たら90秒→2分へ延長、または40秒×2–3本のインターバルも可。
- 自治体の介護予防プログラムでもその場足踏みが定番メニューとして採用。紙面では**カウント指定(例:○回)で提示されることもあります。実施形態に応じ、“時間 or 回数”**で始めやすいほうを選びましょう。(京都地域包括ケア推進機構)
3-4. コグニサイズで“効かせる”
- 例①:足踏み+野菜の名前を言う
- 例②:3の倍数で両腕を上げる
- 例③:50から7ずつ引き算
(国立長寿医療研究センターの資料に基づく)(ncgg.go.jp)
4. 自宅を“転ばない家”にする:5つのチェック
- 段差:玄関・敷居・階段に手すり/滑り止め
- 暗さ:足元灯・人感センサーで夜間導線を照らす
- 乱雑さ:電源コード・ラグのめくれを除去
- 眩しさ:拡散照明+手元灯(白内障・ドライアイ配慮)
- 寒さ:浴室・脱衣所のヒートショック対策
(消費者庁の注意喚起を参考)(日本の環境省)
5. 筋肉と骨を守る「栄養」ミニガイド
- たんぱく質:毎食手のひら1枚(肉・魚・卵・大豆)
- ビタミンD:鮭・サバ・キノコ+日光
- カルシウム:乳製品・小魚・青菜
- 水分:こまめに一口ずつ(夜間導線の照明も整える)
6. 1週間の“やってみる”計画(テンプレ)
毎日
- その場マーチ:1分×2–3セット(朝・昼・夕に分ける)
- 立ち座り:10–15回×1–3セット(痛み手前まで)
週1回:SS-5を測る(12秒前後を目安に自分の変化を見る)
+厚労省ガイド2023の考え方も意識
- 多要素運動(筋力・バランス・柔軟)週3日以上
- 筋トレ週2–3日
- 座りっぱなしを減らす(立てない場合も“じっとしすぎない”工夫)(厚生労働省)
7. よくある質問
Q. 膝が痛いときは?
A. 痛みが強まる範囲はNG。椅子を高くして可動域を小さく、3秒立つ→3秒座るに変更。続く痛みは専門職へ。
Q. 15秒以上かかりました…
A. 明確なリスクサイン。椅子高調整・セット分割で安全第一。手すり・補助具の検討も。同時に睡眠・栄養・服薬を見直す(主治医・薬剤師に相談)。国内研究でも**12.82秒(modified SS-5)**が指標として示されています。(J-STAGE)
まとめ:今日からの“2本柱”
- 柱①:立ち座り(SS-5)
- 12秒前後を実務目安に、週1回は計測。10–15回×1–3セットを日課化。(日本理学療法士協会)
- 柱②:その場マーチ
- 1分×2–3セット/日から。余裕が出たら延長やインターバル。コグニサイズ化で頭×体を同時トレ。(京都地域包括ケア推進機構)
次の一歩:まずSS-5を測る→今日のマーチ合計2–3分を達成→家の段差・暗さ・コードを1か所だけ改善。小さな一歩が未来の大きな安心に変わります。(日本の環境省)
参考
- 年代別SS-5平均(70–74歳=8.28±2.03秒 ほか):厚労省資料。(厚生労働省)
- SS-5の住民向け基準(12秒以内で脚機能保全):日本理学療法士協会ハンドブック。(日本理学療法士協会)
- modified SS-5 カットオフ12.82秒(要支援・要介護):J-STAGE論文。(J-STAGE)
- 評価方法の標準化(椅子高40–45cm等):学会資料。(jsccpt.jp)
- その場足踏み(自治体プログラム掲載):京都・総合型介護予防実施マニュアル、枚方市資料。(京都地域包括ケア推進機構)
- 身体活動・運動ガイド2023(高齢者推奨):厚労省。(厚生労働省)
- コグニサイズ(公式):国立長寿医療研究センター。(ncgg.go.jp)


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